怪しい取引先や、娘の彼氏の調査に興信所を利用する父

会社に寝泊まりするうちの父は、元々倹約家でした。
食事は質素で、ほとんど何も買わないで生活しているような人でしたが、姉の家出をきっかけに興信所を利用するようになりました。

姉が彼氏を連れてくるたびに、その彼氏の事を調査したり、取引先が倒産しそうになると調査していました。

おかげで、取引先の社長が行方不明だと騒がれた時も、父には居場所が分かっていました。居場所が分かっているだけでは、その社長が破産宣告してしまったので未払金を徴収できませんでしたが、それでも、どこに行ったか分からない人を探す苦労はありませんでした。

なぜなら、失踪する前にどこに行くか予め分かっていたのですから。

私が興信所の方と同席したのは1回だけで、姉がいつものように新しい彼氏を連れてきて、結婚したいと言った時でした。調査は1週間くらいで、費用は25万円でした(調査内容によって調査費は異なるようです)。私は、どうせまたすぐに別れるのにと思いながら、興信所の方と父の話しを聞いていました。

興信所の方が父の元に来る1週間ほど前、父と姉の彼氏と姉と私の4人で会いました。姉の彼氏は高校中退で、彼の話では「高校に通っても意味が無いと思って、ずっと夢だったシェフになるためにイタリアに行き、〇〇というレストランで修業をしていました」という事でした。

しかし、彼の目は泳いでいて、私は明らかに嘘の塊だと思いました。

それなのに父は「なかなか面白い男じゃないか」と気に入ってしまいました。後日母から父の会社に電話があり、「あんな男信用できない」と、すごい剣幕だったそうです。

父は母の話を聞き、心配になり、いつものように興信所に調査を依頼することにしました。コロコロ彼氏をかえる姉でしたが、父は心配だったのでしょう。

興信所の方が写真や資料をまとめて持って来た時には驚きました。高校中退なのはただ単に不登校だっただけで、成績がすごく悪く、遅刻や欠席がかなり多かったのです。

イタリアに行ったのも中退直後ではなく成人してからでしたが、短期間の旅行でした。レストランで働いた経験はまったくありません。

お父様が大きな会社をやっていらして、後を継ぐのはできのいい他の兄弟(弟さんだったと思います)らしく、お父様は、彼が本気でやる気ならイタリアン・レストランを出店する資金を出すつもりだったようです。

結局、彼は自分の力で何かをやった経験が全くありませんでした。また、ご近所の評判が最低で、呆れました。そして、興信所の資料の最後に、調査を続ける場合の詳細について、資料が添付されていました。

父は「もうある程度調べていて、興信所も分っているんだよ」と言っていました。父はすぐに人を信用してしまうお人よしなので、いつも社員の方がカバーして下さっていますが、父は興信所を使うことで「安心」を手に入れているのだと思いました。